トビオとATOM

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「もしかして、何か、方法を・・?」ブラックジャックの姿を見た東丈は、あらためて、それを聞いた。 「ああ、そういうことだ。人工冬眠の技術を応用して、仮死状態の可能性があるまでは、肉体を維持している」黒いマントの男は言った。  少し、猫背で歩く。顔は二色。その昔、外地でバス事故にあって、大やけどをしたが、同じく被災した黒人の皮膚を移植して一命を取り留めたというが、真偽のほどは定かではない。拒絶反応の問題がついて回るはずだからだ。しかし、とにかく目の前の彼はその障害を乗り越えたからこそ、そこにいるのだ。そのときの執刀医はバレリーという名だというが、彼もまた無免許医師だったのか、その後ブラックジャックは彼にめぐり合えていないらしい。  トビオは、その自称生命維持装置の中で横たわっていた。 「しかし、これは・・」丈は唇をかんだ。  人の形をした肉塊といったほうが、正しいだろう。即死してもおかしくないほどの事故だったらしい。 「とにかく、地下の施術室に」 「ああ、そうしよう」ブラックジャックの言葉に、東丈は同意した。この男に、それなりの策があるというのなら、それは実験してみる余地があるということなのだ。  このブラックジャックという男は手術の腕とともに、大天才でそのアイデアは尽きることがない。本当なら協会の主治医にしたいほどだが、彼の望むような法外な給料はとても払えそうにないので断念したという経緯があるのだ。本部の大型エレベータで、階下に運ぶ。 「さて、どうするといいのですか」 「別に、わたしとしては、”細工は隆々、仕上げをごろうじろ”ということで」 「もう、仕込みは終わっているということですか」 「左様。君たちは、いつもどおりデステニーをトビオ君に処方してくれたまえ」ブラックジャックは、いつものように傲慢に言った。  それは、不幸な事故だった。そのころの天馬博士は科学省長官として、危機にあった。科学省の全力を注いでの人型ロボット開発は失敗の連続だったからである。人型以外のロボットは、日本の主力輸出品として大健闘していたが、その後、経験的に汎用装置として人型であることが望ましいことがわかってきたのだ。世界中で開発が行われてきたが、なかなか各国、思った結果を得られないでいた。
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