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トビオが独りぼっちになってもう何年になることだろうか。
それに関しては、当時長官の座を争っていたのが、あの”猿田博士”だったことも大きいかもしれない。この猿田という人物も、まあ、天馬博士に負けず劣らずの天才だが、癖のある人物であり、対人関係によいうわさを聞かない。それでも、最後まで候補として残ったのは、対人関係に難ありなのだが、政治的に立ち回るという部分では、かなりの敏腕度を見せたのであった。最後は”決選投票”までいったのだが、そのとき、政治的活動をやりすぎて露見、いわゆる贈収賄事件で失脚。それほど長くないが収監され、その後学会から姿を消した。もっとも、彼ほどの天才科学者は引く手あまたなので、日本を出れば、どこでも自由の天地に違いない。実際、その後、失敗続きの結果、天馬というより、政治家たちの判断で、科学省のスタッフの中に返り咲くという”大逆転”をしてみせたほどである。
「そんなあ、約束したじゃないか、ひどいよ、お父さん」
”聞き分けのないことを言わないでおくれ、トビオよ、お父さんでも、失敗続きなのは、おまえもしっているはずじゃないか。もし、失敗していなければ、確かに、一緒に発表会に行けたのだよ、わかっておくれ”
「だめだよ、僕、お父さんがいなけりゃ、舞台に立てないからね」
”そんなこと、いわないでおくれ。人間を越えるロボット、みんなが考えるほど、簡単じゃないんだよ。お父さんは、スーパーマンを作ろうとしているんだ、わかっておくれ”
「そんな、お父さん、大人のロボットを作ろうとするから、無理があるんだよ。小さな、子供のロボットを作ればいいのに」
”なにい、生意気な・・・え?”思わず天馬は目をむいて、爆発しそうになったが、その表情が、突然止まった。
「ごめんなさい・・」
”いや、トビオや、今、おまえ、なんて言った?”
「だから・・大人のロボットなんて」
”違う、その次だ”
「子供のロボットを・・」
”そう、そう、それだ!そうか、そうか、そういうことだったのか!わははははは!そうだったのか!”天馬博士はモニターの中で声を上げて笑いだした。
「どうしたの、お父さん、僕、何か変なこと言ったかなあ」
”違う、違うよ、トビオ。そうだったのか。一時に大人のロボットを作ろうとしたから、機体のバランスを失って、壊れてしまうんだ”
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