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「おぉ、これはこれはノエル・バルグラド・シャフタール殿」
村長はノエルのことを名乗ると頭を地面につけ挨拶をする。
最強の四獣こと、ノエルはシグレの肩から軽く飛ぶと一回転して地面に着地する。
「ちょっと待ってくれ。どうして、こいつの名前だけ覚えてて俺の名前は覚えてないんだ?」
シグレは思わず村長に詰め寄った。
「それは・・・見た目が覚えやすくて」
もはや、理由ですらなくなっていた。
シグレは頭を掻きながら軽く息を吐く。
「じゃ、ノエルみんなとの別れの挨拶は頼んだ」
「ん、どこ行くのにゃ?」
ノエルからの質問に言葉を選びながら、
「・・・いや、ちょっと忘れ物だ」
その言葉だけで十分だったようだ。
ノエルは悟り小さな親指を立てる。
「しょーがないにゃ。たっぷり絞りとっておくから期待しとくのにゃ!」
何を?と聞きたくなったがいつもの事なので深入りに聞くことはしなかった。
「じゃ、頼んだ」
短い言葉だけ残してシグレはみんなに背を向けて歩き出した。
「まったく、弱る奴にゃ」
そんな寂しそうに歩いていく少年の背を優しい眼差しで見つめていた。
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