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この世界に来てから今日で一年が立とうとしていた。
今の俺からしたら、一年っていう数字は数分の出来事にしか思わないかもしれないが、ここでの生活が心地よく今となっては長く感じていた。
村から出て数十分、照りつくす太陽の下緩い坂道をひたすら歩き続けていた。
額から滴る汗を拭いながら。
確かこの世界の気候は冬だった気がするよな。
再度、自分自身に問いかけてみて確認する。
と、そこで気づく。自分の服装の色に。
全身見渡す限り黒で統一され、黒のロングコートも着ている。
「そりゃ、暑いわけだ」
振り替えると遠くのほうに先ほど居た村が見える。
あんなちっぽけな村の割にはここら辺では一番大きいらしい。
そんな村の南側に大きくそびえ立つ山が今登っている山だ。
近辺の山の中では、標高が一番高く見渡しも良いことから村の人達もよく登山している。
ただ、この山には道が一つしかなくその道を通らなければ頂上に行くことは出来ない。
道を無視して突っ切って登って行こうとしたことがあったが木々が生い茂りすぎて途中で迷ってしまった事があった。
「懐かしいな。あの頃は」
そんな、昔の事を思い出しているとふと笑みがこぼれる。
「それにしてもこれはひどい」
足元に視線を写す。
元の靴の色がほとんど見えないぐらい、泥が靴の回りに付着しており歩く度にぐちゃぐちゃと気持ち悪い音をたてている。
昨晩、ここら辺一体を豪雨が襲い地面はぬかるみ状態になっており足をよくとられそうになる。
せっかくの黒いブーツが泥だらけになっていくのを仕方ないと言い聞かせながらまだ続く坂道を見据える。
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