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一本道を進む両端は深い森に覆われ奥から動物の鳴き声などがやけに大きく聞こえてくる。
ある意味昼間でも不気味な場所だ。
ただでさえ村の人達が登山したりするんだから安全性を完璧にしてほしい。
だが、こんな所に来るのも理由がある訳だった。
「もうそろそろか」
山の中腹辺りに到達した時、道のわきに小さい丘があった。
丘といっても芝生が広がっており、無駄な木々などが一切ない所だ。
丘から気持ち良い風がシグレを誘うように吹き荒れる。
それに、従うように泥々のブーツで一歩一歩登っていく。
丘を登りきった所で足を止めた。
「久しぶりだな。ガイルさん」
ゆっくりと視線を下げると、腰辺りぐらいの小さな墓がポツンと建てられていた。
墓には、こう彫られていた。
『親愛なる我が同胞よ。安らかに眠りたまえ ガイル・イスキーベルト』
その墓の前には、既に誰かが持ってきた華が備えられていた。
それを見て自分が手ぶらだった事に気づく。
「すまない。手ぶらで来てしまって」
謝罪を述べた後、ゆっくり手を合わせ目をつぶる。
先ほどまで、吹いていた風が急に止み辺りは静まりかえった。
この空間だけの時間が止まっているかのように。
数秒後、ゆっくりと目を開ける。
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