プロローグ

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「未玖さん、そろそろ上がってください」 手元にある伝票に集中していたせいか、時間を忘れていた。その声にハッとして時計を見ると五時十分を過ぎている。 「あ、ごめんね!ありがとう」 「いえいえ!こちらこそです。未玖さんのおかげで経理の畠中さんに怒られずに済みそうですし」 アシスタントの春香ちゃんが眉を下げて困ったように笑う。そこへ慌ただしくやってきたのはつい最近入社したばかりの笹原くんだ。 「未玖さん!最後にっ!帰る前にひとつだけ質問っ」 「いいけど、どうしたの?」 笹原くんは手に持っていたプリントを卓に置く。そこには大きな横断幕のデザインが印刷されていた。 「これポンジなんです。おまけにハトメ三つって不安定すぎません?」 「えっ?!ポンジなの?」 「そうなんです。先方の意向で。ちなみにハトメひとつ増やした方がいいですよね?」 「五つの方が安定するんじゃない?」 「五つ入れちゃいます?デザイン端の方結構穴あきになりますね。ロゴが切れちゃうかも」
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