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凌はわずかに目を見開いたものの、小さくため息を吐き出してゆるゆると首を横に振った。
言葉はなかったけど、“ごめん”と言っているような気がしたのは、もたれかかってきた彼が許しを乞うように甘えてきたからだ。
「……悪い」
「いいよ。凌に悪気があるわけじゃないってわかってるから」
怜空とよく似た髪をサラリと撫でる。俯いていた凌の顔が上げられてわずかに傾いた。その角度に合わせるように少しだけ角度をつける。
静かに重なった唇は初めこそ相手を尊重していたものの、やがてそれだと満足できなくなる。
「ねぇ、凌。好き?」
こんな我儘を言えるようになったのは凌のおかげ。そして、彼だけしか知らないわたしの面倒臭い一面だ。
凌はクスッと笑うと呆れたように、だけど嬉しそうに否定した。わたしを抱きしめておでこをくっつける。
睫毛が触れるほどの距離で凌の目が愛おし気に細められて笑った。
「愛してる」
「……うん」
「愛してるよ、未玖」
「……ぅん」
「うん、じゃねぇって」
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