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「山口くんはお料理を食べながら、お隣の話に聞き耳を立てていればいいんじゃない?」
麻琴は「揺さぶり」をかけてみた。
本来は、一番歳下の山口が「お世話係」のはずだ。今日だって、彼のために集まったのである。
やっと気づいたのか、山口ははっとした。
すぐに小皿を取って、目の前に盛られたハーブ風味のローストチキンを、青山の分からサーブし始めた。
山口はモテる男ではあるが、その前に営業マンである。取引先を接待する「プロ」のはずだ。
にもかかわらず……「彼女」のことになると、まるっきり調子が狂うようだ。やっぱり「アオハル」だ。
麻琴は満足そうに「勝利の微笑み」を浮かべた。
そしてそのまま、ふと隣のテーブルの方に視線を移した。
青山の背中越しにいる後ろ姿の「彼女」が、テーブルの下の籐籠に、サッチェルバッグとショップバッグを置くところであった。
麻琴は、その姿をじっと見つめた。
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