生きる意思

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「──っ! 」 速い、速すぎるっ! いち早く仕掛けたのはそよかの方だった。 だが今はどうだ。 一方的に攻められ、何とかそれを防いでいるだけで、かすり傷一つ与えちゃいない。 それどころか、致命的なものは無いが私の身体は所々斬られている。 「おせぇよ!! 」 「ぐっ……! 」 こいつ、大振りで隙だらけのくせにすばしっこいっ! 隙は見えるのだけど、攻撃するより先に相手の一手が上回ってしまう。 かと言って相手の大振りをこの小刀で受け止めるのは自殺行為だ。 押さえ込まれたら非力な私では押し返せない。 避けるか捌くかの二つのみという、最悪の状況。 こうなってしまえば後は体力の消耗戦になる。 そんなこと、分かりきっていたからこそ最初に仕掛けたというのに……。 速さには自信があるが、誰にでも通用するなどとは思っていないし、思えなかった。 けれど、こうも簡単に打ち砕かれると、自然と湧く感情がある。 だが、それを表に出すほど、考え無しではない。 追いつけないのならば、先を読めばいい。 こいつは大振りな分、攻撃に入る前の助走が分かりやすい。 そこを叩く。 攻撃の隙を見極め、男の腹を何とか斬りつける。 「ちっ! 」 よしっ、流れを止めたっ! このまま一気に仕留めないと、もう後がない。 振り返りざま、小刀を逆手に持ち、がら空きの背中に勢いよく突き刺した……はずだった。 「っ!? 」 がら空きの背中は、そこにはなかった。 ただ一つ視認できたのは、朝日に煌めく一筋の線が、私の真上にあったこと。 そしてそれが、振り下ろされる瞬間。 「───」 声にならない叫びが喉を狂わす。 肩が、右肩が斬られた。それも、かなり深く。 慌てて手で押さえても、出血は止まらず、痛みは増すばかり。 そのせいか前がはっきり見えない。 それでも、早く、早く起き上がらなければ……。 「やぁっと捕まえたぜ? 」 狂気じみた声に、全身が強張り、汗が吹き出た。
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