儚い記憶

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燃え盛る炎に、崩れゆく板たち。 息が詰まる程に、火の粉が飛び交っている。 誰もが我先にと逃げる中、一人の少年がいた。 人の波に逆らい、幾度と躓いても必死に足を前に進めんとする少年が。 「そよか!! 」 少年は声を荒らげ、手を伸ばす。 崩れ落ちた板の下敷きになっている、大切な大切な少女の為に。 見覚えのある着物に、地面に弱々しく伏している小さな手。 ──やっと見つけた。 なのに、なのに…… 「──っ! 」 君の手を掴めなかった僕は、どうすればいい? 君に会いたい。 ただそれだけ──…
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