再会

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一つの苦無が空を切ると同時に、二人は動き出した。 互いに距離を詰め、牙を立て合う。 「くっ! 」 鉄の交わる、重く鈍い音が響いたのも一瞬。 力技では押し切られてしまうと、直ぐに距離をとるが、相手もそう甘くはないようだ。 距離をとった際に投げた数本の苦無が、相手の刀で捌かれてしまう。 ……強い 改めてそう実感する。 今まで戦うまでもなかった敵とは、何もかもが違う。 けれど、負けるつもりは毛頭ないっ! 「やるじゃんっ! 」 何度も何度も刃をぶつけ合う二人。 戦っている場所が屋根とは思えないほど、体をくねらせ、しなやかに飛び回る。 動作一つ一つに攻防手段が何重にも積まれている。 瞬きすら許されない速さで、満月を背景に踊り狂う二つの影。 「っ! 」 月に照らされていた二人に、影が差したその時だった。 暗闇の中でも、全身に伝わってきた。 今までのは遊びだったのだと。 会って間もないというのに、あの男が漸く本気の殺意をぶつけにきたと分かるくらいには。 恐怖というには少し違う、けれど動けなかった。 見とれていたのかもしれない。 夜闇など、まだ浅いくらい。 もっともっと深く、色をつけるには薄すぎる程の、真っ暗なこの男の瞳に。 固く握り締めた筈の小刀は宙に放り出され、その事すら気づかない彼女はまるで何かに囚われたかのよう。 「──なっ」 「おっと、危ない危ない」 だからだろう。 屋根から滑り落ちそうになっていることも、敵が目前にいることも、その寸前でしか気づけなかった。 そして、抱き寄せられていることにも。
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