再会

7/11
前へ
/57ページ
次へ
殺される そう悟るのに、時間は掛からなかった。 負けたのだ、私は。 やり残したことは……あるにはあるが、人の最後とはそういうものなんだろう。 どちらにせよ、私に綺麗な死に方は出来なかっただろうしな。 相手の刀が目前へ迫り、死を受け入れるように目を閉じた。 ──斬られるっ 少しの恐怖が混ざり、目をギュッと瞑った瞬間。 斬られたのは顔、を覆っていた布だった。 「えっ」 だが驚いたのはそこじゃない。 「会いたかった──そよか」 抱きしめられていたのだ。 この男の先程までの余裕はどこへやら。 私を抱き竦める両腕は震え、掠れるような小さな声で…… 「何故……私の名前を……」 何かの冗談かと思いたかったが、無関係ではないと確証を持って言えた。 そよか。それは私に残されたたった一つのものであり、名前だ。 「まさか……覚えてないの? 」 そんな不安気な顔で聞かれても、ついさっきまで敵だった人間に易々と教えるわけにはいかない。 名前を知られているが、人違いということもありえる、と思いたい。 「とりあえず、着いてきてよ」 最も、仕事に失敗した私に選択肢は無いのだが。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加