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片思い
傷は痛むけれど、なんとか歩けるようになるまで回復した。
「まだ寝ていて良かったのに」
なんて吉田に言われたが、お前の思い通りになるものかと、なるべく一人で行動している。
一人で何も出来ない三週間はとてつもなく辛かった。精神的に。
主に吉田という名の変態のせいで。
療養一日目はまだ平和な方だった。
あれから記憶の事は一切聞いていないため、身体の一部が取られたとかは無いのだけど。
どういうわけか、朝を迎えると鼻が触れてしまいそうな程の距離に奴の顔があったり、四六時中私に触れてきたりでもう心が持たないのなんの。
あの眩しいくらいの顔面を見せつけられては、あまり直視出来ないのだから。
「はぁ……まったく……」
動揺している私も私だ。
胡散臭い笑みとか、明らかに悪巧みしてる時の顔の方がまだいい。
彼は妙なところで、貼り付けた笑みに隠れてるはずの情を浮かばせるから、もう頭にこびりついて離れやしない。
隠すなら、もっとちゃんと隠して欲しい。
なんて、八つ当たりにも程があるか。
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