目を閉じて、100数えたら さようなら

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「良い奴でしょ? 俺、持田なら安心してミチの事任せられるんだけど」 「だからぁ、それ勝手過ぎだから。持田くんの気持ちってモノがあるでしょ」 「ミチは良いんだ?」 「揚げ足取らないで。私は少なくとも今はそんな気にならないよ、相手が誰でも」 「我儘だなぁ」 「どっちがよ。良いの。その内その気になったら自分でなんとかするんだから。タツが心配することじゃないんだよ」 「心配するよ。ミチの事なんだから」  それなら、どうして達彦自身が私のそばに居る選択肢がなくなってしまったのか。それを思うと、胸が痛くなった。 「そろそろ時間切れっぽいんだよね」 「時間切れ?」 「なんかさ、気合い入れてれば平気だったんだけど、もう、気合い入れてもダメみたい。ほら、見てよ」  達彦が持ち上げた右足。それは、膝から下が徐々に透けて失くなるように、消えていた。私は言葉を失って、達彦の脚越しに薄っすらと透けて見える芝生をただ凝視する事しかできなかった。 「ミチ」  呼ばれて顔を上げると、頬に達彦の骨っぽい指が触れた。その瞬間に、達彦が自嘲気味にふっと笑う。
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