目を閉じて、100数えたら さようなら

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***  達彦からはなんの連絡もないまま、3日がすぎた。そりゃあそうだろう。達彦の彼女だった私なんて『どうよ?』と打診されても、持田くんの方が困るし、吃驚するに決まっている。そもそも、達彦はどうやって持田くんにそんな話を振る気なのか。  そんな読みの浅い所も、達彦らしいと言えばらしくて、微笑ましく思えるのだけど。連絡が来ないのは、新しい恋はまだ先で良いと思っている私には、好都合だった。  しばらく大学の講義を休んでいた私は、代返していてくれていた友人達からかき集めたノートやプリントの類をコピーしに、大学生協の階段を上る。ここの2階にあるコピー機は安い。1枚2枚なら近くのコンビニで済ませてしまうところだけど、今回はいかんせん量が多いから、多分軽くスイーツを食べられる位にはコンビニと差額が出るはずだ。  ちょっと立て付けの悪い扉を力任せに開けると、3台あるコピー機のうちの2台は使用中だった。過去問やレポートをコピーしているのか、2,3人のグループの男子学生がコピー機の隣の作業台でプリントを仕分けしていた。  空いている1台を使おうと奥に足を進めると「あー、そっちのコピー機……」と作業台にいた男子学生の1人がこちらを振り仰いで、言葉が途切れた。 「美智花ちゃん」  振り返ったその人は、やっぱりコンタクトより眼鏡が似合う……今日は眼鏡をかけている持田くんだった。
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