目を閉じて、100数えたら さようなら

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「そっちのコピー機、故障中なんだ。俺ら、もうすぐ終わるから待ってて」 「そっか。じゃあ待ってる」  座ってたら? と持田くんに促されて、私は近くにあった椅子に腰掛けた。他の2人も達彦と同じ学部のメンバーなのだろうけれど、顔を知っているのは持田くんだけだった。 「1人?」 「うん。休んでた間のノート、コピーしに来ただけだから」 「手伝おうか?」 「え……」  量は多いけど、手伝ってもらう程ではないような気がする。そんな私に、持田くんはさらに言葉を重ねてきた。 「次の時間も空いてるから」 「……じゃあ、お願いしようかな」  1人なのが、ちょっと寂しかっただけだよ。別に、達彦にお勧めされたからなんて訳じゃないから。 「さすが持田。速攻でナンパか」 「ちげーから。タツのだから 」 「え? あ……あぁ……タツの……か。そっか。ごめんね」  コピー機の前にいた男子学生が冷やかし混じりに持田くんを茶化そうとしたけれど、持田くんの答えにふざけた笑みは消えて、微かな哀れみの滲む眼差しが残された。  仕方ない。私の失恋は、達彦の周囲の皆が知る所なのだ。 「けっこう量あるじゃん」  私が持ってきていたノートの束に、持田くんは苦笑いした。 「うん。結局、先週も全部休んじゃったから」 「大丈夫?」 「多分、大丈夫。明日からはちゃんと来るつもりだし」  ノートを貸してくれた友達と全く同じ問いに、全く同じ返事を返す。大丈夫じゃない……と、いつまでも言っている訳には行かないんだ。 「そっか。いや、心配だったんだけどさ、俺ら誰も美智花ちゃんの連絡先は知らなかったし」 「そりゃそうだよ」  あはは、と私は笑う。友達の彼女の連絡先なんて、元々共通の友達じゃなければ知らないだろう。
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