目を閉じて、100数えたら さようなら

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「カラ元気……じゃない?」 「カラ元気でも、元気は元気だよ」  カラ元気でも元気は元気って誰に言われたんだろう。小学校の頃に、誰かが言ってた気がする。そのうちほんとに元気になるからねって。 「ちゃんと食べてる?」 「……んー、ボチボチ?」  ぼんやりとした私の返事に、持田くんが苦笑いを零す。 「じゃあ、今度飯食いに行こう? 美智花ちゃんのボチボチがどのくらいなのか心配だし」  毎日、適当に炊いた白米だけ食べていた事は言わないことにしよう。そう思った。  持田くんがコピーを取ったノートを整理してくれたのもあって、思っていたよりもずっと早くコピーを取り終わった。 「ありがとう」 「いいえ。じゃあ、またね。今週は……ちょっと無理そうだから来週、どっかで飯いこう? 連絡するから。バイトの日教えて」 「うん、わかった」  大学生協の前で持田くんと手を振って別れて歩き出すと、芝生がすり鉢状になっている噴水の近くに、よく知った姿を認めた。  達彦だ。  まるで私が今来ることを知っていたかのように、そこに居た達彦は、私を見て笑って右手を上げた。 「どうだった? 持田」 「どうって……別に」  別に、何も無いよ。来週ご飯食べる約束しただけだよ。もしかして、さっき持田くんが居たのは、達彦の差し金だったんだろうか? そう勘繰ってしまうほど、見事なタイミングだった。
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