目を閉じて、100数えたらさようなら

　そのメッセージの到着を小さな振動が知らせてきたのは、私と達彦がお別れをして1週間ほどたった日曜日の午前中のことだった。

『ミチ、元気？』

　付き合っていた頃と変わらないと言ったら変だけど──だって、付き合っている頃は『元気？』なんて聞くまでもなく一緒に居たから──とにかく、それは1週間前にお別れしたなんて思えない程に、当たり前のように私のスマホに届いた。

　全くもう。誰の悪戯なんだか。

　私がぼんやりと思い浮かべるのは、達彦がつるんでいた２,３人の男友達。十中八九彼らのうちの誰かが、達彦のスマホで勝手に送ってきたのだろうと当たりをつけた。

『元気だよ？ そっちは？』

　誰だかわからないけど、今日はバイトもないし相手をしてもいいかな。

『まぁ、ぼちぼちかな。今日、バイト休みだよね？』

　既にバイトのシフトまで把握してる事に、ちょっと感心しながら、メッセージを投げ返す。達彦はこんな事迄友人達に話していたのか。

『休みだよ』

『じゃあさ、お茶しようよ』

　話は軽やかにトントン拍子に進んで、私はこの悪戯を仕掛けてきたのは誰かを見に、いつも達彦と待ち合わせしていた駅の待ち合わせスポットであるステンドグラス前にやってきた。