発情うさぎのお誘いは(ファウスト)

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発情うさぎのお誘いは(ファウスト)

ふと気がつくと、そこは明るい森の中。随分毒々しい色の花も咲いている、見慣れないにも程がある場所だった。 「あっ、やっと起きた」  視界に飛び込んできたランバートが、青い瞳に全力の笑顔を向けてくる。これだけでも驚きなのだが、今はこんなもの些細なくらいの変化に驚いている。  白いウサギ耳がひょこんと出ている! 「どうしたんだ?」 「どうしたって、お前! その耳!」 「耳?」  不思議そうにウサギ耳を撫でるランバートは、まったく違和感ない様子だ。  待て、これは自分がおかしいのか? ランバートがおかしいと思うが、まるでこれが普通だという様子だぞ。 「別に、いつも通りだけど?」  うん、夢だなこれは。間違いなく夢だ!  ファウストは結論に達した。  上半身を起こして辺りを見回すと、本当に見慣れない森の中だ。木々は多いが日の光は地面まで届いて明るく、愛らしい花に混じって随分毒々しい色合いの花もある。毒があるか食われそうな色だ。  その中にいるランバートも、少し妙な格好をしている。ウサギ耳がついている時点で確実に妙なのだが、服装もだ。白と明るいグリーンの服に、背には小さなマントをつけている。普段マントなんてしないから、もの凄く見慣れないが似合っている。  流石俺の嫁だ。  そのランバートはとても機嫌良さそうに隣りに座る。本当にこんな表情の彼は珍しい。いつもはキリッとした笑みが多くて、無邪気な笑みなど仕事を離れて旅行に行ってやっと一回か二回見られる程度なのに。  それに、少し甘い匂いがする。体の内側を熱くさせるような、妙な気持ちにさせる匂いだ。 「こんなとことで寝てると風邪引くよ。ファウストは大事な俺の旦那様なんだから、気を付けてよ」 「……あぁ」  『旦那様』なんて呼ばれ方をされ、頬にちょんとキスをされる。嬉しいがくすぐったい。このどうしようもないドキドキをどうすべきか。  流石にこんな所で盛るのはどうかと思う。ランバートだって外では嫌がる。それどころか人前でイチャイチャするのはあまり好きじゃないのだろう。  が、流石夢の中だろう。妙な事がとにかく起こるものだ。 「どうしたのさ、気の抜けた顔をして。俺達これから子作りするんだから、ちゃんときばってよ」 「子……作り?」  はて? 思わずランバートの胸を触る。ない。次に股座を確かめる。うん、ある。  では、子作りとはいかに??  まったく理解出来ていないまま、ファウストは何故か押し倒される。呆然と見つめる前で、ランバートはさっさと服を脱ぎ捨てた。  綺麗な白い肌と、引き締まった体。見慣れた彼の体で間違いがないが、一つ傷跡がない。  そのランバートはファウストの上に陣取って、やたらと色気を振りまきながらファウストの服を脱がせにかかった。 「言っただろ、発情期きたって。朝から疼いて仕方がないのに、ファウスト出かけて帰ってこないんだからさ。探したよ」  発情期? うさぎ……だからか?  さっきからウサギ耳が僅かに動いている。間違いなくくっついている動きをしている。  そうして呆然と「発情期か……」と思っている間にファウストの服を脱がせたランバートが、温かい舌で首筋を舐めた。 「っ!」 「気持ちいい? ファウストここ、結構好きだよね」  間違いなくランバートだけが理解しているような弱点を的確に攻めてくる。これは間違いなくランバートなのだろう。首筋や鎖骨の辺りを唇でされるのは、確かに好きだ。 「ファウストの匂い、濃くなってきた。どうしよう、凄く疼く」 「疼くって……っ!」  ランバートが股間を擦り付けてくる。前を寛げられ、取り出された剛直に触れる後孔が濡れている。まるで女性のようだ。  今度こそ目が白黒する。彼の昂ぶりは確かにある。体は男のそれで間違いない。だが後孔は濡れそぼっていつでも受け入れられそうな感じがする。そして甘い匂いが増した。 「ファウストも大きくなってきてる。ねぇ、このまま貰ってもいい?」  貰ってもいい? って、既に持っていく気満々じゃないか!  自ら滴らせる愛液のようなものでファウストの剛直を濡らしたランバートが僅かに腰を上げる。そして自らの後孔をあてがい、ゆっくりと飲み込み始めた。 「んぅぅぅぅ! あっ、はぁぁ、大きぃ」 「っ!」  嘘だろ、慣らしもしていないのに飲み込まれる。  普段は十分に慣らしておかないと飲み込めない。当然何の準備もなく挿れることなど不可能なのだ。  なのに今はなんなく受け入れ、それどころか中の肉が欲しそうに包み込んで奥へと導いていく。濡れて、ジュブジュブと美味しそうに全てを収めてしまった。 「はぁ、凄い……こんな奥まで、はいったぁ」  愛しそうに腹を撫でるランバートの興奮して紅潮した顔。僅かに涙を浮かべた青い瞳が嬉しそうにしている。  こんなの、興奮しないほうがおかしいだろ!  ズンと下から突き上げると、肉襞が動いて更に奥へと侵入を許してくれる。まとわりつくような熱い中が、奥を突くとキュッと締まった。 「随分熱烈だな、ランバート」 「あぁ! だって、俺……ファウストの番だからぁ」  番。その言葉に思ったよりも興奮する。自然と突き上げる動きが強くなって、ランバートは腹の上で跳ね上がった。 「やぁ、深いぃ! あっ、強い!」  なんだこの中は、まるで生き物だ。うねるように締め上げて、欲しそうに吸い付いて。しかも濡れてくる。こんなの長く保つわけがない。  下から腕を掴んで固定して、更に奥を暴くように突き入れるとコツコツと当たる。これ以上やると抜けてはいけない部分が抜けてしまいそうだ。そこは加減して、ファウストは最奥に押し当てて吐き出した。 「やぁ! あぁぁ!」  ビクビクと震えながら、ランバートの前からも白濁が散る。ドサリと落ちてきた体を抱きとめ、背に手を回して撫でていると不意に、手にふわっとしたものが触れた。  ……ん?  もふもふした、手の中に収まるくらいの丸っぽいものがぴるぴる動いている。それをふにふにと弄ると、ランバートは「あっ、あっ」と喘ぎながら中を締め上げる。 「しっぽ?」 「ひゃん! 駄目だってそこぉ、気持ち良くなるからぁ」  気持ち良くなっているだろう。それを証拠にはむはむと後孔が動いている。中も欲しそうに吸い付いてくる。 「……ファウストも、まだしたい?」  上目遣いのランバートのこれは、わざとか? 狙ってるのか? あざといな!  一度抜いてランバートを立たせたファウストはバックの体勢のまま改めて突き入れた。柔らかく解れている部分は簡単に飲み込む。先に出した分が僅かに溢れてランバートの白い足を汚していくのは淫靡でたまらない。 「はぁん! ファウスト激しいよ!」 「お前が誘うからだろ!」 「だって、欲しいんだから仕方ないだろぉ」  側の木に手をついたまま何度も中で達しているランバートが、涙目でこちらを見る。その目が可愛くてたまらない。うるうるだ。  手を回して乳首を捻り捏ねると、ランバートは高い声で鳴く。前も気持ち良さそうに溢している。そこを握り込んで扱くと苦しいくらい締め上げられる。流石にこれでは動けない。 「やっ、どうして止まるの? そこ、もっとして欲しい」 「締めすぎだっ」 「だって、気持ちいいんだよぉ」  駄目だ、これは食われる。ランバートのものを扱きながら腰を入れる。その度に誘い込まれ、あっという間に果てた。  本当に、一滴残らず搾り取るように締め上げてくる。思わず倒れ込むように背に身を預けて息を整えていると、ランバートがこちらを見て手を差し伸べてくる。  たっぷりとキスをして至近距離で見つめると、二人で小さく笑った。  ようやく落ち着いて身支度も整えて。そうして隣りに座ったランバートはしきりに腹を撫でている。 「悪い、無茶をさせた。痛むのか?」 「え? 違うよ。あれだけ出されたら、間違いなく出来てるだろうなって」 「出来てるって……」 「俺とファウストの子だよ」 「!」  いや、性別。性別! 「ランバート、お前男だよな?」 「そうだよ?」 「子供は無理だろ?」 「何言ってるの? 俺ウサギだよ? 発情期だもん。やって子種もらったら出来るし。なんなら触ってみる?」  そう言って手を引いて自らの腹にファウストの手を当てる。すると何故かそこが薄らと柔らかく、そして手の平に僅かな鼓動があった。 「な……にぃぃぃ!」 「嬉しくない?」  不安そうに問われ、ファウストはジッとランバートを見る。  嬉しくないわけがない。子供は好きだ。それがもし、ランバートとの間にできたならこんなに嬉しい事はない。 「嬉しいさ、勿論」  ゆっくりと撫でると愛しさがこみ上げる。そして、嬉しそうに見上げてくるランバートが一層大切に思える。こんな風に家族になるのも、悪くないのかもしれない。 =====  目が覚めるといつもの宿舎の、自分の部屋。ぼんやりと天井を見上げ、髪をかきあげる。  それにしても凄い夢を見た。これが初夢ってやつなのか? 夢は妄想の現れだっていうが、あんな事を妄想していたのか?  思って隣を見たファウストは、今度こそ心臓止まるかと思うほど驚いた。  隣ですよすよと眠るランバートに、うさぎ耳が生えている!  思わず腹を撫でたが、そこにはスッキリと引き締まった腹筋がある。手を回して尻を撫でても、そこに丸いウサギの尻尾はない。よく見るとウサギ耳もカチューシャだ。  思いだした。昨日は年末のパーティーで、補佐官だから余興は免除でもいいと言われたのにランバートは余興に参加し、見事に『獣みみ』を引き当ててウサギ耳をつけていた。  それでも一度女装を引き当てた彼は、今更ウサギ耳くらいどうとも思っていなかったようで楽しげにしていて、その姿にムラムラしたファウストはつけたまま昨夜いたしたのだ。  溜息をついて上体を起こすと、なんだか気持ちが悪い。嫌な予感がして布団の中を覗き、次には盛大な溜息をついた。 「俺は十代のガキか……」  あんな夢を見てやらかしている。盛りのついたガキじゃあるまいし、この年になって夢精はないだろうが。  でも、ふと思いだして残念な気持ちにもなる。  もしもランバートとの間に子供ができたら。こんな嬉しい事はないし、絶対に大事にする。間違いなく可愛い。それに、増えるはずのない家族が増えるのは、愛しくてたまらない。 「……万が一できたら……いや、ない。万が一があるならとっくに孕んでるだろ」  ほんの少し名残惜しいファウストだった。
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