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編入生
一
僕の大学一年生は、あっという間に過ぎていった。
勉強とアルバイト。それに、大事な仕事とで、毎日忙しくしていたからだ。
僕と葉山が、何の問題もなく二年生になった日。経済の講義の教室に、知らない顔があった。細い長身の、ボサボサの髪の男だった。
その知らない顔は、講義が終わると、すぐに僕らの元に来た。
「初めまして。田部 圭介です」
黒縁眼鏡からこちらを覗く目には、酷いくまがあった。
「葉山 隆治です。よろしく」
葉山は、爽やかに応えた。僕も、少し慌ててそれに続いた。
「瀧沢 司、よろしく」
田部と名乗った男は、笑って続けた。
「今日編入したので、この学校の事よく分からないんです。教えてくれますか?」
「あぁ、いいよ」
葉山に続いて、僕も笑って頷いた。すると、田部は僕らに続いて歩き、学校内を見回った。
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