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二
紹介されたのは、学校の裏側の喫茶店だった。
二人がけのソファーが机を挟んで向かい合わせになっていて、背の高い仕切りのある個室の様な席に、僕らは座った。
「こんな場所があったんだね。知らなかったよ」
「仕切りがちゃんとしてる上に静かだから気に入ってるんだ」
と、彼は注文したホットコーヒーに、各席に一つ付いている丸い瓶から、大量の砂糖を入れていた。
「……その変わった飲み方も、周りの目を気にしなくて済むし、ね……」
僕が恐る恐るそう言うと、葉山は。そうだね。と笑った。
昼食がわりのサンドウィッチを食べ終えた僕らは、再びコーヒーを注文した。そして、それが届いた時、葉山が真剣そうな顔で、僕を見て言った。
「……瀧沢君」
「何?」
「君も、能力者なのか?」
「えっ……」
「僕も、念で人を殺せるんだ。まぁ、呪術の一種だから、良いものじゃないんだけどね」
それを聞いた時、僕は、彼と奇跡的な運命の様なものを感じた。そして、僕はやや前のめりになって聞いた。
「……そう、僕も能力者なんだ。でも、どうして分かったんだい?」
葉山は、得意げに笑って答えた。
「僕には、能力者の念を感知する力もあってね。それで、丁度君辺りの席にそれを感知した。君じゃなかったら、その前後左右の席の数人の生徒だろうと思ってたけど。やっぱり君だったんだね」
僕は、葉山が他の四人の生徒より先に僕に聞いて来てくれたことに、少し嬉しかった。
当たっていて嬉しかったのであろう葉山は、笑ったまま続けた。
「賢くて成績の良い君なら、選ばれてると思ったよ」
「選ばれてる? 誰に?」
葉山の台詞に疑問を抱いた僕から、ついさっきの嬉しさは消えていた。葉山は両目を大きくして答えた。
「神様にだよ。まぁ、根拠は無いがね。でも、僕と君だけなら、そうとしか思えない」
僕は高揚した。心の何処かで常に思っていた事を、こんなにはっきり言われると、嬉しいどころではないのだ。葉山は、目を光らせて言った。
「なぁ、瀧沢君。僕らで、この世界を変えよう」
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