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「あの」、と声を掛けられた。
??、と思い彼の方へ視線をやると、
ベッドの頭側のネームプレートを見ながら彼が言った。
「相沢さんて、この“相沢”さんですか?」
ネームプレートには、主治医の斉藤先生の名前と私の名前が書いてあった。
ここには主治医とプライマリーナースの名前が書かれる。
こんな所を気にしてくれる、というか気づいてくれた人は初めてかもしれない。
「はい、そうなんです!水野さんすごいな。よく気がつきましたねー。」
「まだ会ったことない先生なのかと思って。これからお世話になるわけですし。」
「医者じゃなくて申し訳ないですけど、まぁメインで担当する看護師です、って事なんで。宜しくお願いしますね!」
私がそう言うと、
「はい。」
彼はクスッと、そっと息を吐いたかのように笑った。
笑うと可愛いんだ。
貴重な物を見せてもらったような、
得した気分。
彼はきっと、“丁寧な人”なんだろうな。
そんな感覚を覚えたこの時が、彼との出会いだった。
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