31人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
3
久しぶりの2連休が明け、いつもの職場へ戻った。
めぐとのランチで、ある意味現実を否応なく突き付けられた感はあったものの、
白衣になって電子カルテと向き合ってみると、これはこれで現実に引き戻される。
きちんと整理整頓された無機質なナースステーションや、
シンプルな配色の廊下を見ていると、少し落ち着く。
昨日までのごちゃごちゃとした私の心が。
この場所に来ると、スッと仕事用の私になれる。
「‥‥だから、昨日のマルク(骨髄穿刺の事で検査の一種)の結果を踏まえて、多分今日にも治療を決定するっぽい。」
深夜勤務の堀田主任から朝の申し送りを受ける。
「じゃあ明日からケモ(化学療法の事で抗がん剤治療)ですかね。」
「見せないようにしてるけど、彼、結構緊張というか、ナーバスな感じだよ。」
主任はマスクを外し、使ったワゴンを片付けながら言った。
彼、とは先日入院してきた16号の患者だ。
「若くて、突然色んな事を強いられてさ。混乱しそうな所なのに、妙ーに落ち着いててそれが逆に違和感。」
「そうですか。まだ私達とも打ち解けられるわけないですもんね。
ここに来て3日ですし。」
「ま!そこは相沢ちゃんのコミュニケーション力で何とかしてやってヨ!
あたし、記録したらさっさと帰りまーす。夜の飲み会に備えて寝なきゃだから。」
日勤に引き継いで肩の荷が下りた様子の主任は、
深夜明けにも関わらず、元気にひらひらと手を振り隅っこの電カルの方へ歩いて行った。
今日は日勤だ。
休みボケもあるから気を引き締めていかないと。
なんだかんだ、この仕事は毎日が戦場。
やる事はたくさんある。
最初のコメントを投稿しよう!