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エルドはのんびりと街道を屋敷の方へ歩き、途中から荷馬車に乗せてもらって帰宅する。
『クローネさんには話をつけた。』
クメシエナが苦笑しながら座っている。オーレは風帝を目指す高潔な魔法使いであるべきと考えていた自分の理想を壊すマネをした事に対して、エルドは少々怒っている
派手にぶん殴られるのも良いかな?とこの第二夫人は思っていたがエルドは別の事をバツとして言い渡した。
『俺が良いと言う日まで本番無しね。』
覗いていた他の妻達は血の気が失せた王女を見て、くわばらくわばらと同情した。一週間もすればクメシエナはすっかり大人しくなっている。
(クメシエナ母さんの様子がおかしい…)
口数が減り、感情の起伏が少なくなった事に子供たちも気付く。どうしたのかと長女レサエナが尋ねたところで、ようやく王女は訳を話した。
『…それで一週間も抱かれてないのよ。』
レサエナは凍り付く。あの父親以上に愛する人の魔力が好きな夫人衆において、好色欲求筆頭の母親が我慢を強いられているなど危険すぎる。
(目の前に父上が居るのに一週間も我慢など、これはエレセイやフリードに襲い掛かる可能性もある得る。)
父上の仕事でしょう、と諭されたエルドはようやくクメシエナを許した。もう何年か経てば大人しくなるのだろうと思いつつ、頼むから俺より先にしてくれと広がっていく自分の額を撫でる。
『セトナは俺が老いたらどうする?』
二歳下の正妻には質問の意図が分からないらしい。うーん、と考えた後に口を開く。
『君か誰かの故郷に引っ越すとか。』
皆で何年か毎に移動してグルグル回ろうと言う。それは名案だとエルドは笑う。
前向きさを得たエルドは後継者に誰がなってくれるのかと将来を考え始めた。
(完)
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