前日譚1

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 『逃げても良いんだぞ?』  千人隊長の報酬など、お前にとっては大した額では無いだろうとバレオはケールに選択を任せた。  『雇い主が高額報酬と共に残した頼みだ、仕方無い。』  ケールはバレオ将軍の配下になった。  将軍バレオというのが随分と柔軟な男で、先日味方を窮地に追いやったレシル側と密かに不可侵の雰囲気を作り、反対の西側には徹底的に抗戦している。  その西に付いた将軍にケベロナという女傑が居るが、バレオは彼女から西側に付くような口調で帝国中央の情報を得ていたらしい。  『ボンクラ。』  ケベロナは東側の国王をそう評した。バレオがそのボンクラに付くなど予想外と、彼を信用しなくなった。  サトラダ国王の不可思議な統率力を知らない女将軍は、30万の大軍が徹底的に破られた全ての原因がボンクラことレヌテントにあると思っている。 『恐怖政治。』  バレオも西の体制が気に食わない。  皇帝を監禁した第一皇子が皇帝諸共消され、ステルヴィオ様なる第一皇子の長子が国王に就いた。  『そんな奴知らんぞ。』  乗っ取りやがったと喚くバレオは多少理想主義的だが、国王が戦下手でも西側の粛清から逃れた人材で東側が持ち直し、拮抗した。
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