前日譚1

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 阿呆らしい、とケールは眺めている。  『いや人が死に過ぎだろ。』  こんなんじゃ大軍を興せないよ?と呆れ返りつつ、攻めてくる西ピクトラ勢は殺らねばならない。  対西ピクトラの要所、ロジオの辺りは逃げるなり籠城するなりで被害が抑えられたが、その他の東西分裂地帯は老若男女の躯が今も散見されると言う。  (どうしようもねえな。)  千人隊長には何も出来ない。  ケールは東ピクトラに仕える事で金も女も力も得たが、背後の三国同盟が国力回復に動く中で帝国が二分して崩壊した事に、大きなため息をついている。  『バレオ将軍がロジオの包囲を解いた。』  やがて西側との国境がおよそ定まる。救われた、と国王レヌテントはバレオを褒めた。  これで帝国は二度と再建しない、とケールは皇帝の血を云々と言っていた将軍カイルに済まんなと内心詫びるしか無かった。  西ピクトラの実権は大臣ベルノなる文官が握っている。  『我が西ピクトラこそが帝国の正式な後継者である。』  などと言って東西の領主に忠誠を求めたが、その西ピクトラ国王なる少年がベルノの息子では無いか、という噂が既に広まっている。
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