【09】異色バディ誕生

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「あぁ良かった!マリネちゃんは外見だけなら可愛いし無害ですからね。でもそれほどそっくりだなんて、僕も会ってみたいですよ!」 「オメェも確実に驚くと思うぜ?で、その美智(みち)って子は、どうやら誰かに命を狙われてるらしい。だが襲われた直後の様子をヒドウが見た限りでは、本人に狙われたという自覚はなく事故だと思っているようだったと聞いているんだ」  不審な人影がトクシンヤの裏手に回ったことに気付いたヒドウが美智を助けた一件をアザミから説明されると、少し考えてからカギヤが口を開いた。 「もしもトクシンヤの閉店時間を狙って強盗を企てた者が、裏手から侵入した際に倉庫の美智君に気付き、騒がれたらマズイと思って狙ったのだとしたら……重い箱を落とすなんて不確実な手段はとらないでしょうね」 「そうだな。失敗したら逆に店中大騒ぎになっちまう。強盗するような奴なら得物(えもの)の一つくらい持参してるだろうから、それを突きつけて脅して縛り上げるほうが確実だ」 「ええ。次に箱を落下させた犯人が強盗目的でないとしたら。商売上で利害が絡む人間が、トクシンヤか有能な店長を陥れようとしたとも考えられますね。商品管理がずさんだったせいで従業員を死亡させたとか、世間から非難されるように仕向けて信用を無くさせるために。でも、世間の関心が高まるほど警察も大きく動くだろうから、仕掛けた本人にとってもリスクが高すぎるか」  犯人像を推測していくカギヤの手が吸い終えた煙草を灰皿でもみ消すと、スーツの内ポケットに入れていたソフトケースから自動的に二本目を取り出して(くわ)えながら、今度は自分のライターで火を点けた。  これでも灰皿があっと言う間に山盛りになっていた刑事時代よりは、随分と本数を減らしたのだと言う。
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