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少し考えていた様子のアザミであったが、煙とともに言葉を吐き出した。
「しかし、そのバイト君は素人だ。このことを教えたら警戒しちまって、襲ったヤツが『何か思い出したのか?』と再び狙い始めたら危険だな。俺が追っているA市の特殊詐欺グループとは関係ないかも知れねぇが、だからといって放っておくわけにも……」
「ええ、一度は確実に命を狙われているのですからね。さすがにボディガードは目立ちますが、しばらく陰から見守ってみるというのはいかがでしょうか?」
「そうだな……。あ、陰から見守らなくても大丈夫だぞ」
「え?どういうことですか?」
「俺もだが、特にヒドウは美智に面が割れてる。今は任務のないアイツを本当の理由を伏せて近づかせ、直接護衛させよう」
と、煙草を灰皿でもみ消し、ケータイを取り出したアザミにカギヤが質問した。
「僕はヒドウ君と組んだほうがよろしいでしょうか?」
「いや、今回ヒドウは別の奴と組ませるから、カギヤは今のうちに旅行でも行って来い。片岡のオヤジにも、優羽に新婚休暇をとらせてやれって俺から話しつけといてやるからさ」
上官の粋なはからいに感激したカギヤが、姿勢を正して頭を下げた。
「旅行まで許可していただけるなんて、ありがとうございます!でも、ヒドウ君に僕以外のアザミ班の誰かを組ませるとなると、モグリ先生は病院が忙しいし……まさか!」
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