裏切りは雨音とともに…。

1/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ

裏切りは雨音とともに…。

 叔母が亡くなった。68才だった。去年の6月の事だった。肝臓ガンだったらしい。  その時から、今回の”計画”は始まった。  いや、正確には”叔母の死”において着想する契機を得た』と言える。  叔母の入院した病院は、偶然にも俺が働く病院だった。その事を叔母は知らなかっただろう。  『働く病院』と言っても、俺の職場は一階の厨房横の『食器洗浄室』であり、叔母がいる病棟に行く機会は滅多に無かった。  それでも『叔母が入院した』と聞いて、俺は父と共にお見舞いに行った。  ちなみにその日の夕方から、仕事で一階に行くのだが。  病床の叔母は、元気な頃からは見間違えるほど痩せていて、肌色も悪かった。  だが、手足は動かす事が出来て、言葉も発せられた。  か細い声だったが、叔母が発したのは兄である俺の父への糾弾だった。  「兄ちゃんは、散々、煙草も酒もやるのにそんなに元気で、なんでアタシがこんな目に…」  この言葉通り、俺の父は毎日煙草を吸い、酒も浴びるほど飲む。にも関わらず病気にならない。(身体の衰えは見られるが)  『何故、煙草も酒もやらない自分がこのような病気(肝臓ガン)にならないといけないのか?』  俺も父も叔母が亡くなるまで、肝臓ガンだったとは知らなかった。叔母の夫(叔父さん)から「肝臓の病気」としか聞いていなかった。叔母自身には病名の告知はしていなかったようだが、本人は薄々気付いていたのだろう。  そうして、出たのが兄(俺の父)への糾弾だった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!