感情を失った青年

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「椎名…?聞いたことない名前だな。」 「あぁ、多分学科が違うからじゃない?俺は教育学部なんだ!」 「そうか。俺は、経済学部だ。」 「おぉ、確かに経済学部っぽい顔してる~!」 「何だよ、経済学部っぽい顔って。」 随分馴れ馴れしい奴だな…。 けど、どこか憎めなかった。 無邪気に笑う彼は、他の人とは何かが違う魅力を持っているような気がした。 そう思っていると、椎名はニヤニヤしながら俺に話しかける。 「それにしても…さっき告白してきた女の子、経済学部のマドンナの山田さんじゃ~ん!何で付き合わないの~?」 「俺は誰とも付き合うつもりはない。」 「え~?それもったいないよ~。誰か気になる子とかもいないの~??」 「いないから。」 「タイプの子も?」 あ~…しつこい。 俺はイライラしながら、椎名に背を向けて答える。 「いないっての。」 そう答えると、椎名は質問して来なくなった。 流石にキツく言いすぎたか…? 恐る恐る振り向くと、椎名はまるで近所のおばちゃんかのような仕草をしていた。 「やだ~、君ってもしかしてゲイだったりするの?」 「はぁ!?」 訳の分からないことを言われて、俺は思わず大きな声を出してしまった。 俺がゲイだって…?何馬鹿げたこと言ってるんだ、こいつは? 「あらやだ、最近の子はませてるわね~!」 椎名はまだ悪ふざけをしている。 馴れ馴れしくて、しつこい奴。 俺の嫌いなタイプの人なのに、何故か俺は…彼を嫌いになることが出来なかった。
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