感情を失った青年

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「な、何で…ここにいるの…?」 俺がそう尋ねると、椎名は頬をプクーツと膨らませる。 「何でって…俺は薫君と昼飯食べたいの!誰とも約束していないならいいでしょ?」 そう言いながら、椎名は俺の隣に唐揚げ定食を置き、隣に座る。 「それより君、さっきの友達2人はどうしたの?」 「それがさ、俺は2人にも薫君と一緒に食べようって誘ったんだけど、何故か断られちゃってさ…。『高坂君と食べたかったら、お前一人で行け。』って言われちゃって…。それで、1人だけで来ちゃった。何でだろうね?」 馬鹿なの、こいつは? 明らかに俺と食べたくないって、言ってるだろ。 俺は友達の言葉よりも、椎名の言葉に呆れて仕方なかった。 「ねぇねぇ、一緒に食べていい?」 「……好きにすれば?」 隣に座ってるのに今更聞いてくるのか。 俺が素っ気なく答えると、椎名は「やった!」と喜んでいた。 そして、唐揚げを1つ箸で掴んで口に放り込む。 俺は気にせずに、味噌汁を飲む。 すると、椎名は唐揚げを頬張りながら俺に声をかける。 「ねぇ、いっふおひほりえはええうの?」 「…なんて?」 俺が聞き返すと、椎名は高速で唐揚げを噛んで飲み込んでから、改めて問いかける。 「薫君って、いっつも1人で食べてるの?」 その言葉に少し腹が立った俺は、椎名に目線を外し、椎名に当たりながら話す。 「悪い?」 「ううん、全然!むしろかっこいいよ!」 予想外の言葉に、俺は驚いて椎名を見る。 椎名は続ける。 「1人でご飯食べてる薫君、大人っぽくてかっこいいもん!俺は、周りに人がいないと落ち着かないんだよね~!だから尊敬する!」 「1人の方が気楽じゃん。自分のペースで食事とれるし、周りに合わせなくていいし。」 「大人~!」 ニコニコしながら、俺を見てくる椎名。 落ち着かない…。 だけど、こういうのもたまには悪くない。 俺は白米を食べながら、ふとそう思ってしまった。
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