落語「となり酒」

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え〜、一席おつきあいを願います。 昔から酒は百薬の長なんてことを申しましてな、体にいいなんてことを言われておりますが、まあそれも程々にするからいいもんでありまして。 「おい、おまえそんなに酒飲んで大丈夫かい?」 「大丈夫、大丈夫、ちゃんと酔い止めのトラベルミン飲んでるから」なんて…それはちょっと違う酔い止めだと思うんですが…。 「おい、かかあ、帰ったぞ」 「あらまあ、あんた酔っ払って…大丈夫かい」 「大丈夫だ、酒はな、酒は百薬の長ってんだ。いいお薬が効いてるってことですよ、な、それよりな、ちょっとこう、小腹がすいてんだ、なんか食うもんあるか」 「まったくもう、しょうがないねえ。ちょうど今日作った雑炊の残りがあるんだけど、それでいいかい?」 「おっ、さすがうちのかかあは違うね、酒のしめに雑炊たあ、最高じゃねえか」 「ほら、とりあえずこっち上がって、ここにあるだけしかないけど食べなよ。そんでね、食べ終わったら自分の家に帰りな」 「は?」 「あんたの家は隣だよ」 「ひえ〜、間違えてたか…これは失礼、いやあ、どうりでおかしいと思ってたんだ」 「何がさ」 「うちのかみさんにしちゃあ、頭にツノが生えてなかった」 おあとがよろしいようで…。
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