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「あの日から、殺された少女と神楽先生のことばかり考えてしまうんです。美しかった。血はもちろんだけれど、先生の手際や思いきり、実行に移した行動力に私は惹かれました」
そして、ふと気づく。
ああ、私は恋をしてしまったのだ、と。
気づいてから、私は神楽先生のことばかり気になるようになった。嫌だった武井先生の呼び出しも、職員室で神楽先生を見ることができるのだからと楽しみに変わった。
「先生、私、先生が好きなんです」
神楽先生は、静かに目を見張った。
「だから、先生。私を恋人にしてくれませんか。そしていつか……いつか、私に先生を切り刻ませてください」
私の愛は、とても崇高である。
愛した者が、血を流して死にゆくさまを見ていたいと思うのだ。溢れ出る血、徐々に白くなっていく肌、途切れゆく呼吸。想像するだけで、私は高まって濡れてしまう。
じっと、神楽先生の返事を待った。
口の中が乾く。静寂すぎる廊下が不安を掻きたてた。こんなに緊張するのは久しくなかったことである。
ややのち、神楽先生は口の端をつり上げた。悪事を抱く政治家のような笑みに、私の胸は乙女らしくきゅんと高鳴る。
「いいだろう。放課後、第五教室にきなさい」
その言葉に、私は満面の笑みを浮かべた。
もしかしたら、神楽先生が私を切り刻んでくれるのかもしれない。愛しい人に切り刻まれる自分を想像して、私は頬を染めた。
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