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一方その頃、わんわん宅配便の事務所では、社長不在でありながらも、従業員たちは業務を平常どおりこなしていた。
「トオルの代理ぐらい、ワシがやってやるわい」
先代のときから奉公している、と自負する一太郎が、徹の机の上に堂々と構え、口うるさい武蔵にさえ上手く指示を出して執り仕切っていた。
……と、そこへ、おもむろに見覚えのある二人が訪ねてきたのだ。それは、東の後輩である山田と田中だった。
「すみませーん!藤山社長いらっしゃいますか?」
「あン…?なんだ、お前らか。昨日は徹を聴取で随分長く引っ張ってくれたな」
喫煙室で煙草を吸っていた東が、声を聞きつけて事務所の入り口へとやってきた。
「ああ、東先輩、おひさです。嫌だなぁ…。オレたちだって、社長を根っから疑ってたワケじゃないッス」
「へいへい…。規則とか、取調べマニュアルか?ごくろーさんなこった!」
東に厭味を言われ、さすがに二人は苦笑する。
「昨日、あのまま指名手配と検問の緊急配備をしたんスよ?」
「そしたら、今朝の明け方4時ごろですが、隣町のコンビニにいた容疑者を逮捕できました!!」
「ほーぉ、さすが仕事が早ェじゃないか?やるな。さすがオレの後輩だ…」
さっきまでボコるぞ?という顔で厭味を言っていた者とは思えない東の言葉に、警察二人組みは苦笑する。とりあえずは東に褒められ、山田と田中はほっと胸をなでおろす。これが“まだ犯人は逃走中です”などと言ったら、今頃こんなところへノコノコ顔など出せたものではなかったはずだ。
「で?相手は誰だったんですか?」
さきほどからパソコンの画面を睨みつけていた武蔵が話に加わってくる。
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