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「わっ…!?」
目の前の視界がブレたと同時に体が背後へと傾いていく。
…今日、何度めだろうか。
倒れるの。
これは前を見ていなかった私が悪いな、こりゃ。
そして何度も倒れるなんて…ホント、運がなさすぎる。
そう、呑気に考えながら目の前の景色がスローモーションになり、今日の出来事が次々とフィードバックしていく。
あぁ……やっぱり、女子高へ行くより共学のままの方が良かった……。
この学校の生徒も『変』だけど。
先生までも『変』でついていけないし。
何より同性が怖い……。
関わると常に寿命が削られていくような、そんな出来事が次から次へと舞い込む。
家族の反対を押し切って転校はしない!!と主張すれば良かったなぁ…なんて今更か…。
そんな事を想いながら。
諦めの早い私は、来るべき時の衝動に備えてギュッとキツく目を閉じた。
…………ん?
あれ、
痛みが……ない。
ない代わりに。
傾いた体は前によろける私の体をボフッとナニかが受け止めた。
そのおかげで床に叩きつけられずに済んだ。
済んだけど……。
「……上原、こんな所で何してる…?」
艶のある低い声が頭上から吐息と共に耳元で囁かれ。
気付けば私は目の前に担任の佐々木先生の腕の中にいた。
……なんだ、なんなんだっ、この状況。
さっきまで人居なかったよね、ここ。
一体どこから現れたの、この人…(怖)
しかも。
何故いまだに腕の中で抱きしめられてんだろうか……。
力がこもってるせいか、抜けられないし。
「……えっと………ま、迷子……です?」
とっさに返した返事が間抜け過ぎだが、あながち間違ってはいない。
ないのに……。
なんだろう、じーっと顔に穴が空きそうなくらいに見つめられて…いる……。
こ、これ、目を反らしたら失礼なのだろうか。
無視した、みたいな感じで。
じっと見つめる先生の視線が揺るがずに見つめてくるので、その先生から目を反らす事が出来ない私……。
「………………」
「………………」
「…………………(汗)」
じっとお互いに見つめ合って無言のまま……数分経ちました………。
その………。
まだ続くのかな、これ??
そろそろ、ホントに気まずい…。
言葉を選ぶのが下手な私には有希のような、間に入ってフォローしてくれる人がいないとこうポンコツになってしまう。
そのせいか、周りがいつの間にか状況を判断し、私を置いて話が勝手に進んでしまうのだ。
口ベタな私には一言(ひとこと)、一言(ひとこと)を発するのが大変なのに。
空気を読んで欲しい………先生…(泣)
「…………ふ…っ」
この微妙な状況に息がしづらくて。
小さく息を飲むと、そんな葛藤をくりひろげている私の肩にもたれかかるように佐々木先生は前屈みになった。
「………なぁ上原、もう少し肉をつけた方がいいぞ。その方が俺好みだから。」
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