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「昨日も来ていただいたのにすみません。早速ですが、本題に入らせて頂きますね。まずはあなたのお名前と会いたい方、その方の特徴をできるだけ詳しく教えてください」
しっかりした男の子だなと感心しながら、俺はあやめについて詳しく伝えた。
「わかりました。〝桐原あやめ〟さんですね。それでは申し訳ありませんが少し丘に出ていただけますか?」
「?」
どういう意味がわからないまま、俺は丘に上がった。
と、急に女の子がしゃがみこんで地に手をつけるとぶつぶつと何か言い始めた。おそらく日本語だが何を言っているのかほとんどききとれない。
「気になりますか?」
「そりゃ、急に目の前でなんか儀式みたいなの始まったら気になるわ」
俺は呆然としてしまって、自分が男の子にフランクに話してしまっていることに気が付かなかった。
「あいつ、桃って言うんですけど、霊を降ろすことができるんです。所謂霊能者ってやつですね」
「霊能者.......ほんとにいるんだそんな人」
「いるんです、ほんとに。信じてもらうには見てもらうしかないですけど。.......そろそろか」
男の子の言葉が終わるか終わらないかのうちに女の子(桃さんの方がいいか?)が光に包まれた。
「この世に満ちた陰陽の力よ、私に加護を与えたまえ」
桃さんがそう言った瞬間、目を開けないほどの光が丘を覆った。
光が引いたのを感じて目を開けるとそこにはあやめがいた。いや、正確に言うとあやめが丘の上に浮いていた。
「?!!」
桃さんが俺を手招いた。
「無事にあやめさんに来てもらうことが出来ました。でも、時間は限られています。この丘に夕陽がさしている間は大丈夫ですが、光が入らなくなると、霊はまた昇っていきます。どうかそれまでに伝えてあげてください」
そういった後、気を使ってくれたのか二人はお店に戻っていった。
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