第十一章  大魔導師と妖精と 

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そう、あれから二つのことが決まり会議は終わって明日ヴィーニーの住むシルサと言う村へ行くこととなり、今晩泊まる各個人の部屋があてがわれたのだ。(現在に至る)  さすがお城だけあって客室もたくさんあり、久しぶりに快適であることには間違いないけど。 ―気晴らしに一度外に出てみよう。 夕日を感じつつ、中廊下に出る。 ―みんなはどうしているのかな?夕食まではまだ時間があるので、この階だけ歩いてみよう。じゃないと迷いそうだし。 そう思い私は中廊下を歩いていた。 時たま、侍女や小間使いの子らとすれ違うが、たいていは会釈してくれるのだが、たまに私の姿を見ると少しおびえた反応を示す人もいた。 ―「どこの馬の骨だかわからない男の、子。」 大臣が言い放った言葉。 私がマレフィック・ミックスだと知っている人はフィレーン王女と老師だけだと思っていたが、もしかしたら…4年前の襲撃を目の当たりにした人は勘づいている人もいるかもしれない…。 ―リーディ何しているんだろう。自室に戻ったのかな…。それともゾリアさんとかと久しぶりだから話しているのかな…。   そう悶々と考えているうちに私は、いつの間にか全然違う中廊下に出てしまっていた。 * * *  俺は仲間たちと一緒に今後の指針を話し合った後に各人に客室を割り当てて、自分も違う階の客室にとどまることになった。先の襲撃で自室のあった王家の居住塔はまだ修理中だからだ。  その客室は城を去る3年前に使っていた部屋であったから、多少の私物は置いてあったが数えるほどで。妹の使っていたオーナメントも常に持ち歩いているし、とりあえず旅慣れた帷子は脱いで王族が身に纏う濃紺のローブに着替えた。  着替えた姿に合わせて髪にオーナメントを飾る。 …元々短髪だったし、あとで切ってもらうか。  そう思いつつ身支度を整え、扉を開けるとゾリアがいた。  ゾリア・マッケラン レオノラと同じく貴族の子息。王宮公認魔導師になるには才能ももとよりまず家柄も重視される。よっぽどの実力がないと王宮公認の魔導師には成れない。唯一の例外が我が従者セシリオだ。 庶子でありながら優れた魔力を持ち、ヴィーニーに見いだされ王宮公認となり俺の従者になった。 (それか原因でやっかまれたことも多かったらしい)  で、ゾリアに話を戻すと、同い年であるせいか、腐れ縁というか唯一俺にタメ語で話せる気心知れた親友でもある。  身分は違うけど、ゾリアはそんなことを気にしない。本人は彼の父上によく注意されていたが気にも留めてもいなかった。 俺もその方がよかったし、(さすがに公の場では俺に対して尊敬語を使うが) ゾリアもそうだった。 「よぉ、王子」 「あっちのテラスに行くか?」 阿吽の呼吸でわかる。 他愛ない話をしに来たのか。俺たちは中廊下にある椅子に腰かけた。 「相変わらず、女を見るとすぐ口説くのは変わってねぇな」 「世の女性を観たら褒め称え、あわよくば今宵のひと時のロマンスに預るのが良いんだぜ。」  昔っから相当なプレイボーイだ。俺は後から面倒なことにならんのか?と思うのだが、それも含めてタラシの醍醐味らしい。 でも俺は知ってる。それは本命を紛らわすための仮面であることは。 …あえてこいつには言わないが。 「その様子だと珍しく今夜の相手には断られたのか?」 「御名答。王子も羨ましいぜ。仲間の女性は見目麗しい方ばかり」 「で?さっそく、さっきもメイを口説いていたって。」 「彼女良いねぇ、まず粋だね?男女の機微もわかってる。踊りで鍛えられたしなやかな肢体もいいし、何より華がある。」
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