第十一章  大魔導師と妖精と 

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キャロルが?? 当のキャロルは、相変わらず穏やかに微笑んでいるけど…。確かに彼女の魔法力は私たちの中でずば抜けてる。 「それに、このシスターは稀にみる清らかな心の持ち主じゃ」 それも納得なんだけど…キャロルは力も弱いし、体力もない方だ。たった一人で行かせても平気なのか?私は懸念したが、 「わかりました、行きましょう。」 キャロルは戸惑いもせず二つ返事で承諾したのだ。 「キャロル…あなた一人で行くのよ?」 「大丈夫よステラ、妖精の村なら魔物はいないでしょうし…。」 「道中一人なんだよ?」 するとリーディが私の肩に手を置いて言った。 「大丈夫だろう。キャロルが確信もってOKしたってことは。」 …確かに、キャロルは無理なものは無理だってきちんと言ってくれる。 決して流される人じゃない。 「じゃぁ、シスターキャロル、頼みましたよ。」 「はい、老師様」  そして、私たちは一度準備のため急きょ城に戻った。そしてすぐに準備に取りかかった。私とプリオールはしばらくヴィーニーの家に滞在することが決まりリーディとメイとコウは明日洞窟へ行く準備もある。  キャロルも妖精の村があると言われる湖がちょうど洞窟までの通り道らしいので 途中まで3人と同行するので一緒に出発することになった。私はとりあえず、私物をまとめて、シルサに戻る前に口添えしてくれた、 ゴードン老師とフィレーンさんにお礼を兼ねて報告に行った。  コウたちは洞窟に行くために城下へ武器防具の新調へ。  私のフランベルジェもボロボロなので新しい武器を調達してくれるそうだ。 早速槍の腕が鈍りそうなので槍を所望する。これから魔法の鍛錬をするっていうのに 槍を所望するなんて変だけど私は杖を装備できないから仕方ない。  お昼ごろ、ちょうどコウたちが戻ってきた時、セシリオさんも別の仕事から戻ってきていた。セシリオさんはリーディの従者だけど、ずっと不在だった間は見習い魔導師の指導や、大臣の補佐や城下の見回りなどいろいろ仕事がたくさんあるようでリーディが 洞窟に行くと聞くや否や、私もついてゆくと一点張りだった。でも私たちは使命にかかわる危険なミッションなのでペンダントの封印解くものではないセシリオさんを巻き込むわけには行かなかったのだ。 「せめてゾリアでも付き添いで」 セシリオさんは食い下がるがリーディも引かない。しまいにはリーディに、 「姉と俺がいなかった間のスフィーニは大臣とセシリオがいたおかげでどうにかなってきたんだ」 と窘められて引き下がった。城を護るが一番大事だからと。ゾリアさんとレオノラさんもリーディのことを心配していたけどすぐに了解してくれた。 二人には、 「伊達に城を3年も離れていたわけでもないし、今はメイ、コウに背中を預けているんだ。心配いらない。」 そう言って 笑いかけていた。 夕方になり、私とプリオールは荷物をまとめてリーディに移動呪文でシルサに送ってもらうこととなっていた。 背中には新しい武器が装備されている。 マジック・スピア コウが城下の武器屋に行ったら錫杖がほとんどで、あとは短剣などの類の武器が少ししかなく。槍はなかったらしい。 「どうしても魔導師向きの武器しか置いてねーんだ。」 「リーディの剣の類は?」 「レイピア系の剣は亡くなった父上の形見だ。父上は騎士だったからな。紋章はさすがにこの国の職人に彫ってもらったけどな。結構な数を持っていた。で、ブロードソードなどの長剣は城を出た時に他の街の鍛冶屋で造ったものだ。」 コウは納得したようにふうんと頷いた。 で、肝心の私のリクエストの槍はないのでどうしようかと思ったら、コウが一番大きな金属製の錫杖を何と槍に改造したのだ。  旅立ちの初期に装備していた母の形見のスピアの石も取り付けてくれた。これがすごく素敵でさすがコウだなって思った。 「この石が少し魔法力を増強できるみたいだから、呪文を使うときも役に立つかも」 そう言って渡されたこの槍を私もすっかり気に入って。早速装備したわけだ。呪文が発動し、あっという間にヴィーニーの家の前につく。 「頑張れよ。プリオールもお前も」 「なにからなにまで、忝(かたじけな)いです」 プリオールは頭を下げる。 「ま、いいんだけど、ヴィーニーの指導に付いて行くのは大変だが力はつくから。」 「わかったわ。リーディたちも気を付けるのよ?」 「大丈夫さ。あ、そうだ」 リーディは急に思い出したかのように懐から何や出して、私に握らせた。 「これは?」 受け取ったそれは七色に光る巻貝だった。 「魔法の力をセシリオに吹き込んでもらった。もし困ったことがあったらこの貝に 向かって俺を呼んでくれ。一度だけ俺と連絡が取れるから。」 時間や時空を操作できるセシリオさんが、スフィーニ周辺の海岸にあるナナイロマキガイに魔法をかけるとそういう道具ができるらしい。 「島からしばらく仲間はいなくなり、お前しかいない。だからな。」 「プリオールもいるし大丈夫だけど…そうよね」 「なんかあったら姉やじぃを頼るんだ。一人で抱えるな?」 「うん。」 私は頷いた。巻貝をそっと包み込むように持って。 「おおー。名残惜しいのはわかるが日が暮れてしまうぞ。さあ王子は帰った帰った。」 ヴィーニー老師が痺れを切らして扉を開けて出てきた。 「じゃぁ。」 そうしてリーディは呪文を詠唱して一瞬にして光の中へ取り込まれ消えた。 初めて、みんなとバラバラになる。  ほんのちょっと不安があるけど、私は私で精進しないと。みんな危険を冒してまで目的を果たしに行くのだし…。キャロルなんて私たちのために一人で挑むのだから。 ―頑張ろう。 私はプリオールに笑いかけた。プリオールもあどけない顔で頷いてくれた。
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