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そんな事が在るはずはないと心では思っていましたが、そうなって欲しいという願いから、私はそう口に出していました。
リリーアナリスタさんには、来世では幸せな人生を与えて欲しい。
私はそう願っていました。
少し遅めの朝食でしたが、リリアナちゃんが手綱を引いているからだと思いますが、ドランとカロンが張り切って走っていたので一時間程でクラリムに到着しました。
「おぉー! もう帰ってきたのかお譲ちゃん! 旅が無事に終わってなによりだ。」
「うん! ただいまぁー!」
壁で囲まれたクラリムの出入り門で、私達に気付いた門番の人が、御者席に座るリリアナちゃんに声を掛けていました。
ティアルちゃんの一件で、私やリリアナちゃんの事は守備隊の人達に周知されることになり、私達が知らなくても、いつも笑顔で声を掛けてくれていました。
私達はレテイアから帰って来たので、クラリムの東門から街に入りました。
なのでちょうど商業ギルドの建物が一番近く、屋敷の鍵を貰って商店街を抜けて屋敷まで向かうことにしました。
「お帰りなさいぃ~!」
大通りから商業ギルドのある通りへと馬車を進めていくと、聞き覚えのある声が客車の中まで届きました。
「おねえちゃんただいまぁ~!」
その声はロチアさんでした。
馬車は人の歩く速度と殆ど変わらない程まで速度を落とし、私は窓を開けて、併走するロチアさんに鍵を貰いに行くことを伝えました。
「皆様、お帰りなさいませ。楽しい旅を過ごされていたようで安心しました。」
商業ギルド前に停めた馬車から降りると、ロチアさんが私達を出迎えるように待っていてくれました。
「はい、楽しい旅行になりました。」
「すぐに鍵をお持ちしますので、馬車の中で待っていて貰って構いませんので。」
私が客車から降りようとしたところをロチアさんが手を出してそう言って、急いで商業ギルドの建物の中へと入って行きました。
そして1分も経たない内に戻ってきました。
「ではフルララ様、お預かりしていた鍵をお渡しします。それでですね、この後、1時間程経ちましたらお屋敷の方へ訪問させて頂いて宜しいでしょうか? 維持管理でご不満な点などがないか、確認に伺いたいのです。」
「はい、大丈夫です。」
一時間後という時間はロフェアさんの都合なのか、荷降ろし等で私達が忙しいと思っての配慮なのかは判りませんが、ルヴィア様とリリアナちゃん達を屋敷前に降ろしたら馬車を返しにいく予定だったので、私としてもちょうど良い時間指定になっていました。
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