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食事を終えたリリアナの口まわりを布で拭いて、手を水魔術『ウォーター』で洗い、食器も同じように洗って、風魔術『ウィンド』で乾かし、食器棚に戻す。
俺はリリアナを乗せて、花の形をした扉を開けて部屋を出る。
神殿も色々と手を加えた。
自室から階段周り、そして1階に降りて外までの続く通路の、崩れていた石壁を新しいのに交換し、さらにトイレと風呂部屋を新しく作った。
数キロ先の岩山が、この神殿の石材と判ったから切り出して持ってきたのだ。
風魔術で岩を切り、重力魔術で積み替える。
俺にとっては、積み木を作るのと大差ないことだからな。
俺は、リリアナを体の上に沈み込ませたまま神殿の外に出る。
リリアナを連れての移動で一番安全な方法がこれだった。
ただ、ポヨンポヨンと飛び跳ねるとリリアナがめまいを起こすから、重力魔術で自身の体を操作して、移動している。
ようは、飛行しているのだ。
俺とリリアナが転移した遺跡は、大きな山に囲まれた広い高原の中にあり、人族も魔族も居ない場所で、冬になると雪が数メートル積もる場所だから大陸の北部なのは間違いなかった。
季節はもうすぐ3度目の冬が来る。
森は赤く染まりだし気温も下がり始めたから、今のうちに冬の貯えを集めているのだ。
俺の『次元倉庫』は、入れた物の時間が止まる。
だから、山で取れた果物や木の実に、釣った魚とか仕留めた獣の肉とかを保存するのにも適している。
焼き魚とか、焼いた状態で収納すれば、温かいままで取り出す事も出来る。
高度を上げて飛行したほうが、獣などからは安全になるが、人族や魔族に見つかるよりは、はるかにマシなので、いつものように高原を這うように飛行し、目的の森に入る。
そして、少し大きな川に出る。
《リリアナ、頑張って探してくれよ。》
《うん。 がんばる!》
川の下流からゆっくりと上流に向けて、俺は水面すれすれを飛行していく。
俺は、魔力感知で水の中の生き物の場所は簡単に判るが、それだとリリアナがただ見てるだけになるから、ゲームとしてリリアナに探す係りを与えている。
もちろん、見逃した獲物は俺がそれとなく教えてやるんだけどな。
《パパ、あそこ!》
《パパ、こっちにも!》
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