魔王、面倒を見る。

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 4人は席に座り、黙々と食べ始める。  そしてあっという間にテーブルの料理が無くなっていく。 「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」 《もういいのか?》 「はい。十分に満たされました。」  ガトラがそう言ったあとに、3人も頭を下げていたので、俺は本来の目的だった世界の事を聞くことにした。 《そうか…参考になった。ありがとう。》  俺とリリアナが転移したのは50年後の未来だった。  そしてこの場所は『北の大地』と呼ばれる、大陸最北端の場所だ。  魔王ディルラルは勇者リリーアナリスタ・オベルイスと相打ちとなって倒されたが、そのあと魔王スヴェルデンが現れたと。  で、魔王スヴェルデンは、領土を広げるために魔族を連れて隣接していた人族のカザルド領の街を奪ったということだ。  はぁ…あいつってそんなに野心家だったのか。  魔族領だけでも忙しかったのに、そんなめんどくさい事をよくもまあ…  それにしても、50年後か…転移じゃなくて転生したのか?  だが、俺だけの固有能力は確かに転移だったはずだが…まあ、いまさらか。 《俺の聞きたい事はもう無い。次はそっちの話を聞こうか。》 「それなら、この北の大地を目指す事になったフルララから話を。」  ガトラから指定されたフルララが、俺に一礼をしてここに来た理由を語り始める。 《なるほどな。 3年前の星詠みか…それで、さっきの取り乱しだったわけだ。》 「はい。星詠みが示したものが、リリアナちゃんなのではと…」 《で、仮にそうだとして、その星詠みの真意は判っているのか?》 「いえ、世界を導く存在なのか…滅ぼす存在なのか…それとも、神そのものなのか…まったく判らないのです。」 《そうか。だったら、リリアナかもしれないな。》 「やっぱり!」  目を輝かすフルララに俺は言葉を続ける。 《いや、勘違いするなよ。その可能性はお前達にもあるし、俺にもあるということだ。》 「え?」 《この地に導いたのは、その星詠みだが、それこそが啓示の始まりのかもしれないだろ。それと、リリアナはこれから何にでも成れる。それこそ、世界の王にもなれるかもしれないだろ。もちろん、お前達もだ。そんな事は誰にでも可能性があるって話ってことだ。未来の事は誰にも判らんからな。》  ほんと、俺スライムになってるからな!  フィアンセに裏切られたからな!  元勇者を育ててるからな!
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