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ここは…ああ、記憶はちゃんとあるな。
俺が居る場所は、壁や床、天井などが乳白色の石材で囲まれた場所で、崩れていたり、植物が壁に纏わりついている様子から、どこかの神殿か宮殿だった場所に出たようだった。
勇者はどうなった? 俺の近くには居ないみたいだが…
というか…視界がおかしい…
全方位を首を動かさずに見る事が出来る。あと、魔力の流れも一緒に見れる。
…あと、ものすごく視点が低い。
そっか、寝ている状態か。なら起き上がれば…
ん? 足どこだ? 手は? あれ…ちょっとまて!
俺は自分の肉体を魔力感知で調べる。
……
スライムじゃねぇえかぁああああ!
なにがどうなったら、スライムに転生するんだよ!
え? もしかして、魔力もスライム並み…
俺は、自分自身の魔力を確認してみる。
よし! 魔力は魔王の時と同じだ。『次元倉庫』も使えるみたいだし、最悪な事態は免れたようだな。しかしだ…
俺は、スライムになった俺のすぐ傍に、人間の赤ちゃんが居ることにある想定を浮かべる。
これはやっぱり…勇者なんだろうな…
勇者が着ていたフルアーマーの鎧の中で寝ている赤ん坊を、俺は起こさないように重力魔術でそっと絨毯の上に寝かせる。
絨毯はもちろん、『次元倉庫』から出した物だ。
これは、俺が片付けるのが面倒な物やコレクション品など、色々とぶち込んでいる倉庫なのでほぼ何でもあると言っていい。
そして勇者の鎧を当然、倉庫に入れる。歴代の勇者から、集めているからな。
まあ、赤子は寝ているから後回しでいいか。
とりあえず、鏡を出して俺の姿を確認しておこう。
立て鏡を取り出し床に置いて正面から確認する。
プルプルと動く体は、闇のように黒く、それでいて金属のような光沢を放っていた。
体長というか、全身は30cmほどのボール型のスライムで、全身の力を抜くと重力で少し潰れる。
いわゆるところの『スライム』なんだが、ちょうど2本の角のような突起物があった。
なるほど…この漆黒の闇色と二本の角が、俺が魔王だという証だという訳か。
いや!!!! 気休めにも程があるだろ!
なにが漆黒だ! ただ黒いだけじゃねぇか!
『魔王=角』って、牛も角あるじゃねぇか!
そもそも、角じゃねぇし!
ああぁー! せめて、人型に生まれたかったぁああああ!
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