フルララ、クラリムへ。

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 天界の事や、神様については深く聞けないですし…何か話題になるものは…あっ!  私は最近読み終えた一冊の本の事を思い出しました。 「ルヴィア様、少しお訊ねしたい事があるのですが宜しいでしょうか?」  本に向けていた視線を私へと向けたルヴィア様が、 「はい、良いですよ。」  と、笑みとともに答えてくれました。 「勇者リリーアナリスタさんが使ったとされる封印魔術というものは、どういったものなのでしょうか?この前読んだ小説のように、封印が解かれたりとかするのですか?」  私は、『白銀の騎士』の中にあった、『封印が解けてリリーアナリスタが戻ってくる。』という事が現実に起こりえるのかが、気になっていたのでした。 「そうですね、封印魔術とは、異次元の空間に閉じ込めるという魔術なのですが、閉じた時点で、術者本人であってもその存在をこちらから確認することは出来ません。例外としては、現世にある何かを媒介にして封印した場合は、その媒介から封印を解くことが可能です。  例えば魔鉱石その物や、魔力を施した何かですね。」 「それでは、リリーアナリスタさんが使用した封印魔術が何かを媒介にしていたら、復活する可能性もあるのですね。」 「そうですね。ですが、発動者のリリーアナリスタも一緒に異次元に入った理由が、その媒介を残さないようにする為だったかも知れませんね。」 「あっ、そうですね。この世界に残せば魔族に封印を解かれる可能性がありますよね。」 「はい。そして、媒介だけを投げ入れなかったのは、異次元で魔王が媒介を破壊する可能性があるからでしょう。」  小説の事があり得るのか。という疑問でしたが、勇者リリーアナリスタが何故、自身を犠牲にした理由が判ったような気がしました。 「それじゃあ、リリーアナリスタさんは今も、魔王ディルラルさんと戦っているのでしょうか? いえ…仮にそうだとしたら、とっくの昔に和解してそうですよね。」  ディムさんは、あまり魔王ディルラルさんの事を話しませんが、ロフェアさんから聞いた話で、全然悪い人ではない事を知りました。 「そうですね。」  と、ルヴィア様が笑っています。  今ままでも、ルヴィア様が微笑んでいるのを何度か拝見していますが、その笑みは可笑しい時に見せる笑顔です。  可笑しな事を言ったつもりはないのですが… 「だとしたら、この世界のどこかで、二人で楽しく暮らしているかもしれませんね。」 「あっ! 確かに。勇者や魔王の肩書きを捨てて、のんびり暮らしていたりですね。」
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