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ロチアさんから屋敷の鍵を貰って商店街の道を馬車で通過すると、思っていた通りの光景になりました。
「リリアナちゃん、お帰り~」
「ただいまぁ~!」
と、何度も掛け合う声が私の耳に届きます。
時刻は昼前という事で買い物をする客は少なく、商店街の人達が忙しい時間じゃない事もあって、店先から私達の馬車を見送ってくれています。
「帰って来た、って気持ちになりました。」
「ふふっ、リリアナちゃんも嬉しそうに答えていますね。」
「はい。リリアナちゃんが一番に望んでいたことでしたしね。」
魔族領で服を買い、フルラージュさんの結婚式に出て、人族の領地を周りながらダンジョン等で遊ぶのが当初の目的でした。
なので本当なら、人族の領地を時計回りに巡る旅になる予定でした。
ですが、ロフェアさんと出会って魔族領で沢山遊ぶことが出来、リリアナちゃんが大満足したのです。
妖狐族の国には月に一度はお邪魔したことになり、3回の訪問。
妖精の森を作り、ディルラルシア国内にある二つのダンジョンの探索に、ドスドラさん捜索の時に見つけたダンジョンで、改めて皆でドラゴン狩りに行き、そして人魚族の島でのクラーケン討伐。
人族領側ではオリファさんの故郷『イストール領』の領都の観光に、隣領の『ロニア領』でダンジョン探索。
道中でも、蟹に葡萄に船と、沢山の物を買い、盗賊退治が2回ありました。
空の旅もあり、帰路は船旅を楽しみました。
これがたったの、3ヶ月の間の出来事なんですからね!
そりゃ、リリアナちゃんが満足するのは判ります。
私も、振り回されるように過ごした日々から一段落ついた次の日には、心が抜けそうになっていましたからね!
クラリムに帰ってアンジェちゃんやティエスちゃん、そしてお母様に会いたいと思うのは当然のことです。
そんな経緯と、通常ではあり得ない移動手段のおかげで、今回の旅行は予定よりも早い帰宅になったのでした。
そして馬車は、私達の屋敷に入る為の小道の前に停まりました。
「ついたぁ~! ロフェア、ここがおうちね!」
「サファ、リリアナちゃんと一緒に屋敷で待っていてね。」
「…みゃっ」
膝の上で寝ていたサファを抱き起こして客車から出ると、リリアナちゃんも、ロフェアさんに御者席から降ろして貰っています。
「ドラン~カロン~ありがとうぉ~」
リリアナちゃんの声に答えるようにドランとカロンは頭を下げて、リリアナちゃんが頭を撫でに来るのを待っています。
ドランとカロンの頭を交互に撫でるリリアナちゃん。
私はその光景を眺めながら御者席へと上がります。
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