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「リリアナちゃん、屋敷に行きますよ。」
「はーい!」
客車から降りたルヴィア様に呼ばれたリリアナちゃんに、私はサファを預けました。
「それじゃあリリアナちゃん、ドランとカロンを馬車屋さんに返しに行きますね。」
「うん!」
手を振って見送るリリアナちゃんに、名残惜しそうに見詰めるドランとカロンでしたが、ロフェアさんの手綱が振られると素直に歩き始めました。
「こんにちは~ドランとカロンを返しに来ましたぁ~」
馬車屋さんの建物の前に馬車を止めると、店主のドワルさんが何事かという顔を見せながら現れたので、御者席から少し大きな声を掛けました。
「その様子だと満足した旅行のようだが、随分と早かったな。」
「はい。楽しい旅になりました。ドランとカロンも楽しんでいたと思います。」
「そりゃよかった! 当分先の話になると思うが、また旅行に出る時は使ってやってくれ。こいつらも望んでいると思うからな。」
労うような目と、少し寂しそうな目でドランとカロンを見詰めるドワルさん。
「ドワルさん、オリファさん達の代わりに、このロフェアさんが私達のトレジャーハンターになってくれましたので、またダンジョン探索に馬車で向かう予定です。」
「なに!? おぉそうか! それは嬉しい話だ。」
旅行に出発する前に、「オリファさん達は結婚して故郷で暮らす事になるので、馬車でのダンジョン探索はなくなると思います。」と、私から話していたのでした。
「はい。リリアナちゃんも楽しみにしていますので、またよろしくお願いします。」
「おぉ! 任せてくれ。 客車の整備も、ドランとカロンの健康管理も完璧にしておくからな。」
ロフェアさんの、公務に支障が出ない休暇の時にクラリムに来て貰う。というディムさんの提案はロフェアさん本人に却下され、ずっと一緒にいることになりました。
そしてロフェアさんの公務については、一ヶ月に一度ディルラルシア国に顔を出すという条件になったそうです。
いくら夜の時間の飛行で移動出来る距離だと言っても徹夜で飛ぶことになり、それを毎月一度の往復となると、その労力は大変だとディムさんや私が言ったのですが、ロフェアさんはそれでも構いません。っと、意志の固さを見せました。
なので、臨時で雇ったトレジャーハンターではなく、一緒に暮らす仲間として、ロフェアさんを紹介しました。
それは商店街の人達にも同じなので、帰り道に通る商店街でも、声を掛けてくれた人達にロフェアさんを紹介しました。
「この街も良い街ですね。」
「はい、皆さん優しくて、暮らしていて楽しいと感じます。」
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