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最初は全然見つけられなかったリリアナだったが、最近では体長10cm以上の獲物なら8割ほどの正解率で見つけるようになっていた。
《よし! 今日も凄いぞ、リリアナ。沢山見つけたな。》
リリアナが見つけた海老と魚は、俺が重力魔術で捕まえて、魚なら内臓をその場で取り出し、海老は頭と胴体を切り離してから『次元倉庫』に入れている。
生きた物は倉庫に入れられないからだ。
そして山の中腹辺りの上流まで上がった俺とリリアナは、木の実取りに移る。
3年目となると、木の実や秋の果実がなっている場所は覚えているので、移動中は獣探しがゲームになる。
森の中を縫うように進む中、リリアナが指を刺す。
《パパ、くまみつけたよ。 あっ! おやこだ。》
左手300メートルほどの木々の奥にいる熊をリリアナが見つけた。
《親子か。》
《うん! つぎ~》
食べるために命を奪う事の意味を、俺はリリアナに教えていた。
その中で、子育て中の獣を見たリリアナが「かわいそう」と、自分から俺に言ってきた時から、子連れの獣には手を出さないことになった。
《パパ、とりがいるよ。》
大きな鴨鳥の大群が、冬の前にこの地を離れるため、空を飛んでいるのをリリアナが見つける。
《ああ、今回はあれを捕まえようか。》
俺は体を浮かせ森から空に上がり、20匹ぐらいが編隊を組んでいる一団に狙いを定める。
距離があるため、俺は風魔術『ウィンドショット』で狙い撃ち、次々と落とした。
《パパ、すごい!》
《そうだろ。パパはすごいんだぞ。》
俺は、喜ぶリリアナに嬉しくなり、意気揚々と一団すべてを撃ち落した落下地点を目指す。
数百メートル先の森の中に入り、落ちている鴨鳥を拾っては、俺は次々に下処理をしていく。
『エアカッター』と『ウォーター』で綺麗な剥き身だけを持ち帰り、皮と内臓は、この森の獣達に分け与える。
『共生』と『共存』は魔族の世界では最低限のルールだ。
力あるものが独占するのでは、争いしか生まれず、国は育たず種族としての価値も下がる。
だから俺は、王となった時に最初に決めたルールだった。
《よし、終わった。もうすぐお昼だし戻ろうか。》
《うん。》
リリアナを連れての外出は、昼までと決めている。
理由は、昼ごはんを食べるとすぐに寝てしまうからだ。
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