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大きな炎魔法は場所を選び、そして味方にも被害でるから、狭い場所では無理だったのだ。
横に大きく跳んだ魔獣は目の前の獲物を諦めて、坂の下にいるオリファに駆け出す。
「オリファ!」
ガトラの声が響く中、立ち上がったオリファは今度は重心を低く構え、盾を前にして剣を構える。
魔獣が盾に喰らい付く瞬間、オリファの剣が魔獣の首に剣を突き刺していた。
崩れ落ちるように地面に倒れた魔獣に止めの剣を突き刺し、勝利を知らせるように盾を掲げるオリファに3人は安堵の声を漏らしていた。
ガトラは、オリファに声をかけようとした時、木々の葉が擦れる不自然な音に緊張が生まれる。
「何かいるぞ!」
そしてガトラが声を上げた時には、林の中からオリファに飛び掛る魔獣の姿があった。
さっきとおなじ犬型の魔獣で、跳躍からの一撃を盾で塞いだオリファだったが、2撃目の前足の横殴りの攻撃を防ぐことが出来ず。吹き飛ばされて木の幹に打ち付けられる。
「オリファさぁああんー!」
フルララとガトラは坂を駆け下りる。
明らかに致命傷を負ったオリファに回復魔法をかけるには、直接体に触らないと出来ない。
だからガラトは、フルララの行動を逸早く理解して、一緒に駆け出していたのだ。
だが、魔獣はそれよりも早く、オリファの体に牙を立てていた。
「うわぁああああ!」
金属の割れる音と一緒に、オリファの悲鳴が森の中に響き渡る。
「やめろぉおー!」
ガトラの剣が、刹那に魔獣の顔に突き刺さり、噛み付きからオリファを救い出す。
魔獣は怒りの形相を見せながら、後ろに飛び退いていた。
「フルララ、オリファを頼む。」
「はい。」
フルララは回復ポーションをオリファに掛ける。そして回復魔法を使って治療を始めるが、明らかに許容範囲を超えている損傷に、絶望が心を支配していく。
それでも、フルララは最後まで諦めることは出来ない。
例え望みが薄くても可能性はまだあると、心を奮い立たせながら回復魔法を続けていた。」
炎の矢を地面に刺さして、魔獣をフルララ達に近づけないようにしたフルラージュは風魔術『ウィンドショット』で魔獣に向けて狙い撃ちを試みるが、貫くことが出来ない。
「ダメ! 風は効かないみたい。火を試すからこっちに誘導して!」
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