魔王、面倒を見る。

6/8
1039人が本棚に入れています
本棚に追加
/652ページ
  「そっ…そうですね…私は囚われていたのでしょうか…」 「いや、フルララは世界の為を思ってここまで来たんだ。間違いじゃない。」  ガトラがフルララの言葉を否定する。  あぁ…危険な旅を言い出した本人だしな。  それで、この結論になれば当然か。 《そうだとも。判らない事を知るために、行動するのは間違いじゃない。それに、俺とリリアナと出会えた。この結果があれば十分だろ。お前の行動は正しい。》 「そうですね。この場所でディムさんとリリアナちゃんに出会う事が、星詠みの啓示だったかもしれませんね。」 《そういうことだ。じゃあ、あとは帰るだけだな。お前達が越えてきた洞窟まで連れていけばいいか。それと、死なれては困るからな。『エリクトラ』を5本ほどやる。リリアナが人族で暮らすときに頼ってもいいんだろ?》 「はい。もちろん、この恩は必ずお返しします。ですが…」  不安顔なフルララが、寝ているリリアナを見つめ、意を決したような言葉で俺に衝撃的な言葉を伝える。 「今のままだったら、リリアナちゃんは人族で暮らせません!」 《はっ!? なんでだ!》 「人族は念話を使いません!」 《はっ? ………あぁあああー!》  うかつだった。俺はリリアナと普通に会話をしていたから気にしていなかったが、そういや、リリアナの泣き声以外は口を閉じたままだ。  くそ! 俺としたことが。  知識は教えられるが、言葉を発声させるにはどうしたらいいんだ? 「なので、私に提案があります。」  俺が後悔の念を浮かべていると、フルララが俺をジッと見つめていた。 《なんだ?》 「私がリリアナちゃんが喋れるようになるまで、ここに残ります。」 「フルララ、何を言っている。」 「そうよ。喋れるようになるかも判らないのよ。あなた一人でどうこう出来る訳ないでしょ。」 「フルララさん、気持ちは判らないでもないですが、喋れない子供もいることですし、そういう方向で収めてみるのはどうですか?」  3人の仲間が言う事は正論だな。
/652ページ

最初のコメントを投稿しよう!