俺を好きになってくれませんか。

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これまで抱きしめたことはあってもこんなふうに包まれるように抱きしめられたことはない。 温かい体温と包まれる安心感に思わず顔を擦りつけた。 「なぁ、もっとぎゅっとしてみて」 「え!?」 「強くぎゅって」 「よ、酔ってます?」 「んー、そうかも」 さっきよりも強く抱きしめられるが、嫌悪感どころか心地良さに目を閉じたくなった。 持っていた鞄をそのまま下に落とし、侑司の背中に軽く腕を回した。 「さっきの告白の返事」 「…はい」 「…うん」 侑司の頭がぎくしゃくと動く。 耳元に熱い息がかかる。 思わず身を捩って少し距離を開けると離すまいとするかのように強く引き戻された。 「うんって、いいよってことですか」 「まだ半信半疑だから言えねーけど、自覚したらちゃんと俺も言うから。 その、告白的なこと」 たぶん赤くなっている顔を見られないように侑司のスーツを握り締める。 「とりあえず、さ。 一緒にいる時間増やそう。 飯とかでもいいし、どっちかの部屋とかでもいいし、お前と居てみたい」 消えそうな震える声で小さくはいと言ったのが聞こえた。 ゆっくりと熱が離れていく。 それを物足りないような気持ちで受け入れていると、俺の顎を侑司の指が持ち上げた。 「軽く触れるだけ、ダメですか」 いいよ、の代わりに目を伏せた。 閉じるのは気恥ずかしくて無理だった。 傾けられた整った顔が近づいてくる。 唇に柔らかい物が触れる。 侑司の緊張が唇から伝わる。 唇を舐めることも舌を入れることもせず侑司はゆっくりと唇を離した。 「嫌じゃ、なかったですか」 「うん、全然」 侑司の顔が泣きそうに歪んだ。 「好きです」 「……うん」 応えたい。 同じ思いで好きだよ、と。 きっと、そう遠くない先にそう伝えられる。 確信めいた考えに笑ってしまいながら侑司を見上げた。 「も一回ぎゅってして」 赤くなって慌てる侑司を見て声を上げて笑った。 からかってるでしょ、と拗ねる侑司の腰に腕を回し俺から抱きついた。 からかってねーよ、と頭を擦りつけながら。
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