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残り時間わずか。
ガイは振り返ると走り出す。手首に巻かれた小型の装置を駆使し、カプセルを呼び寄せた。
目の前に突如現れた卵形カプセルに飛び乗り、素早くコクピットに身を滑らせる。
間に合うか?
操作に時間はかからない。ただ、作動するのに、場所によってはもたつく場合がある。
背後で空間が震えた。
しまった。始まった。
シリコンバレーの上空に黒い雲状の何かが広がっていく。モニターから見るそれは、禍々しい地獄への扉のようにさえ見えた。
急いでくれ。
ガイは胸の内で叫んだ。あれに呑みこまれたら、このカプセルでも脱出は不可能だ。
急げっ!
叫びとともに、そんなことは無駄だと知りながらもコクピットを叩いた。
カプセルが震えた。
間に合ったか?
カプセルの震えが大きくなる。だが、同時に、ものすごい力で引き寄せられつつあった。あの暗黒にだ。
まずい。くそっ、頼む。急いでくれ。
装置相手に哀願した。それに応えてくれたのか、カプセルはヒュン、という音ともに別の空間へ飛んだ。
よし、とホッとしたのもつかの間、コクピットのあちこちから警報音が鳴り始めた。そして、ガクガクと大きく揺れる。
だめだ。壊れた。あとは運を天に任せるしかない。
ガイは目を閉じた。
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