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しばし沈黙――。重苦しい空気が流れる。
一平は、自分が言ってしまったことの重さを思い知る。何しろさっきの騒動から、まだ不安は拭えていないのだ。それなのに、更なる危険に飛び込むと宣言してしまった。ちょっと前までの自分なら信じられない行為だ。
「しかし……」
大河内の掠れたような声が聞こえてきた。だが、その後は何も言わない。
「大河内警視正は、これで一平君にもしものことがあったら、責任を問われることを心配しているんですね?」
「そんなことは……」と大河内が言葉を濁す。
そういうことなのか、と一平は思った。今後POE対策に活用できる可能性のある一平を失った場合、大失態となるのだろう。自分の命が大きく扱われているのを再度実感した。
「私たちが勝手にやることにしますので、心配しないでください。ね、一平君」
急に優しげな声を出し、一平の肩に手をまわしてくる雪乃に戸惑った。強いのに柔らかな体だなあ……と思い、慌てて気を引き締め直す。
「な、何でもいいです」
いい加減な応え方をしてしまった。
「君たちが外へ出る場合は、ガードする刑事を更に増やそう。だが、充分に気をつけてくれよ」
そう言ったのは島村だった。
その声を聞いて雪乃がにやりと笑った。
ガイが大きく頷いて、一平の肩を叩く。
萎えそうになる気持ちを無理矢理奮い立たせようとしたとき、沙羅の顔が思い浮かんできた。
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